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漱石の私物・メモ集めた大回顧展(Ecolomy)
夏目漱石肖像(神奈川近代文学館所蔵) 1912年(大正元) |
文豪・夏目漱石(1867〜1916)が生誕140年、プロ作家になって100年という節目の年に、漱石を深く知るのは興が深い。東京・両国の江戸東京博物館では東北大学所蔵の手紙、蔵書などを中心に約800点を集めた特別展「文豪・夏目漱石 そのこころとまなざし」が開かれている。漱石の直筆原稿の廉価版や、孫娘が書いた夫婦論も出て、「生」の漱石に触れる機会が広がっている。
「文豪・夏目漱石−そのこころとまなざし−」展(11月18日まで)は漱石の蔵書約3000冊のうち、英国滞在中に購入した図書約400冊をはじめとする、漱石ゆかりの資料群が東京へ里帰りしたのが最大の見どころ。太平洋戦争の最中、弟子の小宮豊隆が東北大学附属図書館に移し、奇跡的に残った漱石の旧蔵品「漱石文庫」の全容が東京でまとまって公開されるのは、今回が初めてだ。
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岡本一平画 「漱石八態」 (川崎市岡本太郎美術館蔵) 大正後期 |
漱石直筆の原稿、日記、メモなどから、創作の源泉に触れることができる。英国留学中に購入し、漱石自身が加えた書き込みが見える洋書類も初めてまとめて公開される。
明治改元の前年に当たる1867年(慶応3)、江戸・牛込馬場下に生まれた漱石の人生は明治の文明開化とシンクロしている。今回の展覧会はその漱石の生い立ちから文学者として大成していくプロセスを、800点余りという類を見ない規模の資料を手がかりにたどっていく。
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漱石画「山上有山図」 (岩波書店蔵) 1912年 |
文学者・漱石以外の面にも光を当てた。絵画や書をたしなんだ漱石が残した、水彩画の絵手紙や、自ら装幀した『こころ(心)』の原画などを公開している。
漱石が教師として赴任し、名作『坊っちゃん』が生まれるきっかけになった松山や、熊本からもゆかりの品が集められた。会場入口に置かれた等身大マネキンは漱石の体格から皮膚まで精巧に再現。骨格データからよみがえらせた声も聞ける。
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漱石デスマスクの型 新海竹太郎作 個人蔵 1916年(大正5) |
死者の顔に石膏のような軟らかい素材を乗せて型を取り、作ったリアルな死に顔の面が「デスマスク」。日本人は死に際してあまりデスマスクを取らないが、実は漱石にはデスマスクがある。臨終を迎えた漱石の顔に石膏を当てて型を取った。公開される機会の少ないこのデスマスクの石膏型も今回は公開されている。
展覧会公式ガイドブック『文豪・夏目漱石−そのこころとまなざし』(江戸東京博物館・東北大学編、朝日新聞社刊)は同展の全貌を凝縮していて、漱石ファンに必携とも言える。展覧会会場以外に一般書店でも買える。
節目の年に、漱石の足跡を振り返る書籍が相次いで出版されている。10月17日に出版される予定の『直筆で読む「坊っちやん」』(集英社新書刊)は漱石が書いた原稿用紙をそのままカラーで収録した。自筆原稿本は高価になりがちだが、この本は1260円という破格の安さだ。代表作の1つ「坊っちゃん」の直筆原稿150枚を新書判に収めた。
リアルな漱石の筆遣いに触れる楽しみが安価に手に入るわけで、古書マニアならずとも興味をそそられる。印刷文字になってしまうと、作家の身体性ははぎとられてしまうが、手書き文字には漱石の理性や作家意識が色濃く反映されていて、「物書き・漱石」のメンタリティーをうかがい知るヒントを得られる。
新書サイズながら、写真の精度は高く、原稿用紙に書き込まれた赤字、校正もくっきりと見える。漱石の孫であるコラムニスト、夏目房之介氏の書き下ろしエッセーも収められている。
『漱石夫妻 愛のかたち』(朝日新聞社刊)では、孫娘に当たる比較文学研究者の松岡陽子マックレインさんが祖母や母からの聞き伝えをたどって、家庭人・漱石のイメージをつづった。孫娘しか知り得ない人物像をもとに、漱石一家の家族イメージをとらえ直している。著者の父は漱石門下の作家・松岡譲で、母は漱石の長女・筆子だ。
鏡子には過去、「悪妻」説がつきまとってきたが、近年の研究や、家族の文章からは、こうしたそしりにはあまり根拠がないという指摘が出ている。『漱石夫妻 愛のかたち』でも著者が知る祖母の実像が紹介され、漱石作品に描かれた妻像も参考に、漱石夫婦の間柄の読み解きを試みている。
関連サイト
[ 2007年10月15日/Ecolomy ]























