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廃線跡を歩く旅
廃線跡トレッキングツアーで線路を歩く参加者〔共同〕 |
廃線跡を歩く「廃線ウオーク」が愛好者を広げている。既に電車が通らなくなった線路やトンネル、橋を歩いて、かつての姿を懐かしむ味わい深いウオーキングだ。列車が走っていたころの風景を思い浮かべ、沿線の歴史・移り変わりを学ぶ機会にもなる。
ファンの間で人気が高いコースの1つが旧信越線の横川−軽井沢区間。約5kmが遊歩道として整備されている。標高差が500mを超える急勾配とあって、碓氷峠を越える車両は登山鉄道でおなじみの「アプト式」を採用していた。トロッコ列車が走る路線が一緒に楽しめるのも魅力になっている。
東海道本線の富士と中央本線の甲府を南北に結ぶ身延線の廃線区間を利用して作られた「富士緑道」は富士山を仰ぎ見ることができる、眺めのぜいたくな廃線跡だ。全国で700にものぼるという廃線跡の中でも、写真撮影に格好のポジションがいくつもある点で特筆に値する。
『鉄道廃線跡を歩く(I)』(宮脇俊三編著、JTBパブリッシング刊) |
廃線ウオーク人気に火を付けたのは、『鉄道廃線跡を歩く』シリーズ(宮脇俊三編著、全10巻、JTBパブリッシング刊)。約600カ所もの廃線跡を取り上げ、それぞれの廃線理由や、歴史的経緯、沿線風土なども紹介している。
JTBパブリッシングはその後も『私鉄の廃線跡を歩くI 北海道・東北編』『同II 関東・信州・東海編』(ともに寺田裕一著)を出版している。「上越・北陸・近畿編」「中国・四国・九州編」の刊行も予定されている。
旧国鉄士幌線のコンクリートアーチ橋梁群 |
北海道上士幌町の糠平(ぬかびら)湖畔に残る、旧国鉄士幌線のタウシュベツ川橋梁には、湖の水位の加減で出現と水没を繰り返す「幻のアーチ橋」がある。1987年に廃線となった後、2アーチ橋を含む約8キロの廃線跡地は散策路として整備された。地元のNPOひがし大雪アーチ橋友の会は「アーチ橋散策地図」をまとめたり、トロッコの走れるレール敷設を進めたり、アーチ橋を見守り育む取り組みを続けている。
廃線ウオークのガイドブックを読んで、アクセスや背景を調べておくのは、当日の楽しみを深くする。できれば、地元のNPOや郷土史家などのサイトもチェックしておこう。歴史的目配りの厚みが増す。
87年の旧国鉄民営化と前後して、全国の鉄路がいくつも廃線に追い込まれた。しかし、レールが外された鉄路も消えてしまうわけではない。そこに鉄道が走っていた事実は変わらないし、基礎部分は大抵、残る。地元自治体が散策路やサイクリングロードとして整備しているケースも多い。
現在でも廃線を迎える鉄路がある。兵庫県を走る第3セクター鉄道の三木鉄道は3月末で廃線となる。
熊本県小国町の旧国鉄宮原線をたどる廃線跡トレッキング |
廃線跡を歩いていて、鉄道とぶつかる心配はまずないが、歩行を前提に手入れされていない場合は、地面が荒れていて、つまずいたり転んだりする心配がある。歩きやすい靴・服装を心がけたい。木が茂ったり、山陰に入ったりして、急に足下が暗くなるところもある。懐中電灯や方位磁石は必須だ。地盤や野生動物などの危険があり、立ち入りが制限されている区域も珍しくない。注意書きを無視して入り込むマナー違反は禁じ手だ。
『消えた轍 ローカル私鉄廃線跡探訪』シリーズ(全4巻、寺田裕一著、ネコ・パブリッシング刊)はローカル私鉄の廃線を丹念に追った労作だ。北海道から九州までブロック別にまとめてある。そのほかにも『日本の鉄道 廃線探訪の旅』(原口隆行著、ダイヤモンド社刊)や『鉄道廃線ウオーク』(上下、舟越健之輔著、新人物往来社刊)などが廃線ウオークの参考になる。
トンネルや駅舎は産業遺産としても知的好奇心をくすぐる。地域の足として期待されながら、ビジネスとして成り立たなくなっていったプロセスは東京一極集中や産業構造変化、過疎など、日本の「かたち」の変容に思いを馳せるきっかけにもなる。推理と思索の淵に立つ知的ウオークは、過去の道程を知る大人にこそふさわしい。























